国際機関邦人職員インタビュー:国際移住機関 大野拓也さん

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今回の国連職員インタビューでは、昨年9月に多くの難民・移民が国境を越えて移動せざるを得ない危機的状況を背景に国際社会の今後の対応を議論した「難民と移民に関する国連サミット」が国連本部で開催された際に国連に加入し、同年12月5日には設立65周年を迎えた、国際移住機関(IOM)で仮設住宅事業に携わっておられる大野拓也さんにお話をお伺いしました。

大野さんが国際移住機関に就職されたきっかけについて教えてください。

大阪大学で住宅地計画など建築を学んだ後、建築分野の研究所で働きながら博士号を取得しました。その後目にした求人広告に国際移住機関スリランカ事務所の仮設住宅担当官の募集があり、建築の知識で災害復興に貢献できるならと思い応募しました。スリランカでは最初はスマトラ沖大地震後の仮設住居建設に携わっていたのですが、そのうち内戦が激しくなり紛争対応の事業に、また内戦が終結してからは復興支援のための事業に携わりました。その後20101月に発生したハイチ大地震の復興支援のため2010年7月よりハイチ事務所に異動となり、現地での仮設住居の建設事業に携わりました。2014年からはSenior Shelter and Settlements Officerとしてジュネーブ本部で 仮設住宅事業に携わっています。

現地でのお仕事、また本部でのお仕事の面白いところ、課題などを教えてください。

現地の仕事の良いところは、やはり仕事の成果が目に見えるということです。家をなくした被災者の方々に限られた予算でどのような仮設住宅を建設するか、現地スタッフや同僚らと議論しながらデザインし、発注し、現場監理を行います。 また実際に住まう人からのフィードバックも直接聞くことができるので、自分の知識を活かして作ったものを現地の人に渡す喜び、人との関わりを感じることができます。
本部での仕事は、様々な国での事業、組織全体の動きや意思決定を包括的に見ることができ面白いです。現場では説明をしなくても実際に見れば成果がわかり評価されていたのに対し、本部ではプレゼンテーション能力や課題処理のスピードなどが求められます。また出張の際には現場を見て初心に戻ることができ、このような機会も大切だと思います。

撮影 鍋島明子
これまでお仕事をされてきた中で大変だったこと、またそれをどのように乗り越えられたか教えてください。

2010年の夏からハイチで仕事していたのですが、2011年3月に東日本で震災があり、日本に戻って日本の復興のために何かしなければと思いました。しかし様々な方から日本のことは心配せずハイチで頑張ってほしい、ハイチで頑張っている姿を見ると日本の皆も励まされるからと言われ、ハイチに残ることにしました。その際にはハイチのスタッフや現地の方々からも大変感謝され、与えられた仕事を一生懸命にしていこうと心を決めました。日本の復興に直接関わらなくとも、ハイチの復興支援をすることで、間接的に日本の復興の精神的支援をすることができるのだと実感しました。やはり人とのつながりが自分の仕事の動力になっているのだと思います。

お仕事をする上で大切にされているものについて教えてください。

事業を成功させるには、才能、人脈や周囲の支援、そしてタイミングが大切だと思います。それが揃った上で状況に流されずに自分の意思で正直に続けていくことで事業が良い方向に向かっていくと考えています。また、今後は私自身が前に出て行くよりも、可能性のある若い方が活躍できるようサポートをしていきたい、一緒に事業を行うことで現地の方に知識を授け彼らの成長を支えていきたいと思っています。

国際機関就職を目指す方々へのお言葉をお願いします。

憧れだけで国際機関に就職をすると、現実を見て幻滅するということもあろうかと思います。ですから国際機関に入ることを目指すのではなく、国際機関も就職の選択の一つだということを覚えておいて欲しいと思います。先ずは自分の専門分野を確立し、その知識を活かせる場、力を実現する舞台として国際機関での就職を計画するのが良いのではないでしょうか。そのためには、まずは国際機関にこだわらず社会人としての経験を積むことから始めることをお勧めしたいです。

大野さんは、お仕事の傍ら、今年で設立6年になる国連オーケストラで演奏もされています。国連オーケストラには20カ国から70名が参加されており、言葉が異なる人々と音楽を通じ一つのことを成し遂げることのできる貴重な経験だとおっしゃっていました。今は3月25日にビクトリア・ホールでのチャリティーコンサートに向けて練習されているということで、皆様も是非いらしてください。

国連オーケストラHP

撮影 IOM/Muse Mohammed


大野さんの執筆された記事もご覧ください。
ハイチでの復興活動にたずさわって
http://www.iomjapan.org/japan/jp_report_017.cfm
ネパール地震後の緊急支援

聞き手:野嶋友香 (IMD business school)






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